成人の股関節ってどのくらい柔らかいの?ーSLRからー

健康

股関節の柔軟性ってどのくらいが普通なの?唐突に感じた私は文献を読み漁り,ひとつの論文にたどり着いた.

股関節の柔軟性とあるが,主にハムストリングス(モモ裏の筋肉)の柔軟性をはかっていると思っていただいて差し支えない.

臨床では非常にハムストリングスの硬い人が多いと感じている.このひとつの論文からどのくらいの柔軟性があればよいか結論は出せないが,左右差の有無など学ぶ内容はあったので共有する.

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成人における股関節の柔軟性は?

対象

対象は20歳 か ら69歳 までの 健康成人 で あ り, 男 性946名, 女性842名 の両下肢 の3,576肢 につ いて調査

方法

方法は,背臥位(仰向け)として膝関節を伸展させ,骨盤を固定しながら膝伸展位の下肢を他動的にゆっくりと抵抗なく挙上し得る股関節の屈曲角度を5度単位で測定.

結果

  1. SLR角度の正常値:臨界値は男性65度,女性75度.
  2. 年代差:50代男性,20代女性は平均角度より有意に低い.
  3. 男女差:各年代別にみた男女間の平均値にも高度の有意差が,20代を除く30代から60代までの各年代間に認められ,女性のSLR角度が大であった.
  4. 左右差:男女共,SLR角度に左右差はみられなかった.
  5. ハムストリングス拘縮陽性(タイトハムストリングス):男性12.5%(50・60代では,20から40代までの陽性者より有意に多かった),女性13.2%(20代は陽性者が40~60代より有意に多かった).
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この論文から見て感じた違和感の正体

この論文から参考に出来るな~と感じたのは女性の方が角度が大きく(≒柔らかい),左右差がない.ってことぐらいだなと.強いて言えば50代男性,20代女性は角度が小さい(≒かたい)という結果も使えなくはない.

SLR角度の正常値とハムストリングス拘縮陽性(タイトハムストリングス)の結果は,正直言って使えない.なぜなら信頼性に乏しいと考えられるからである.

方法をもう一度見直してほしい.何か違和感を感じないか?

背臥位(仰向け)として膝関節を伸展させ,骨盤を固定しながら膝伸展位の下肢を他動的にゆっくりと抵抗なく挙上し得る股関節の屈曲角度を5度単位で測定

どこに違和感を感じたのか?それは,「他動的にゆっくりと抵抗なく挙上し得る」と言う文言だ.詳細はこの論文を読んでいただきたいが,この条件下で70度より大きい数値が出る人は何人いるのかが疑問に思う.

実際に行ってみるとわかるが,下肢をゆっくり持ち上げていくと割と早期に抵抗感(脚が重く感じる)を感じると思う(下図).しかしこれでは信頼性を得られないと思う.人によって抵抗を感じはじめる感覚は異なるため,再現性に乏しい.せめて感覚に頼ったものではなく,膝関節が屈曲する(曲がる)直前の角度だったら再現性も高く,信頼性も担保できたのではないだろうか.老若男女,数多くのデータを蓄積されているだけあって,非常に残念だ.

もし私の解釈の仕方が間違っていると思う方はTwitterのDMにその旨をご教授いただきたい.

参考文献 忽那龍雄:成人における下肢伸展挙上角度についてー特にSLRテストに対する考察ー.リハビリテーション医学,vol21,no4,1984.
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