その膝関節の痛み「股関節が原因」です

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今回は先週投稿した記事に関連する内容です。

股関節由来の疼痛なのか、それとも膝関節由来の疼痛なのか?

なるべく簡単に素早く鑑別できると良いな〜と思い論文を読み漁っていると参考になった報告があったので共有します

意外と多い?あぐら座位時に膝内側が痛い人
臨床で胡座(あぐら)時に膝関節の内側が痛いと訴える方が多々います。膝関節の障害を診た上で疑わしい初見がない場合、閉鎖神経障害を疑う必要もあるのではないかと思います。今回紹介する論文は胡座ではなく正座時の膝関節痛ですが読んで損はないはずです。
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股関節牽引によって変形性股関節症における関連痛を股関節由来と評価できるか?

目的

変形性股関節症などの股関節疾患において,鼠径部の痛みだけでなく,殿部や膝関節前面などの関連痛が認められること がある.このような関連痛が患者の ADL や QOL の低下を招く一因となる.これまでに変形性股関節症に対する股関節牽引 療法で鼠径部の痛みが改善することは報告されているが,関連痛に対する効果は明らかではない.変形性股関節症において 殿部や膝関節前面などの痛みが股関節由来か評価する手法として,股関節内の局所麻酔剤の投与後や人工股関節置換術3 ヶ 月後に痛みが減少するかの評価が挙げられるが,侵襲的であることや保存療法の場合では行えないことなど,それぞれ問題 点がある.膝関節前面痛が股関節由来の痛みか膝関節や大腿四頭筋による痛みかによって治療方針が大きく異なるため,鑑 別する評価手法の構築は重要である.今回,鼠径部痛と膝前面痛を有する変形性股関節症に対して股関節牽引療法の即時的 な痛み軽減効果を検証し,股関節牽引療法によって関連痛を股関節由来と評価できるか検討した.

方法

対象は人工股関節置換術目的で入院した変形性股関節症患者で,鼠径部痛と膝関節前面痛を有している女性 8 名とした. 膝関節前面痛が股関節疾患由来の痛みであるかどうかは,整形外科医によるキシロカインの股関節注射により痛みが軽減す るかで判断した.年齢は 66.4 ± 8.6 歳,病期は進行期 2 名,末期 6 名,JOA Hip Score は 35.1 ± 9.9 点であった.鼠径部痛と膝関 節前面痛の評価は股関節注射および股関節牽引療法前後に 10m の最速歩行を 2 回行い,その直後に visual analog scale(VAS) にてそれぞれ行った.股関節牽引療法は専用の大腿カフ装具(大腿フラクチャーブレースに準じて作製し牽引するためのバ ン ド を 取 り 付 け た も の )を 作 成 し ,腰 椎 牽 引 機 を 使 用 し て ,股 関 節 ・ 膝 関 節 軽 度 屈 曲 位 に て 牽 引 力 を 1 5 k g w t と し て 1 5 分 間 , 10 秒牽引,10 秒休止の間歇牽引で行った.統計は Wilcoxon signed-rank test を用いて鼠径部痛と膝前面痛における股関節注射 前後と,股関節牽引療法前後の VAS をそれぞれ比較した.また,股関節注射と股関節牽引療法の施行前と施行後の VAS の差 を改善度とし,鼠径部痛と膝前面痛についてそれぞれ算出した.まず,股関節注射と牽引療法による鼠径部痛の改善度およ び膝前面痛の改善度の相関関係をそれぞれ求め,ついで,股関節牽引療法における鼠径部痛と膝前面痛の改善度の相関関係 を求めた.なお,有意水準は 5%未満とした.

結果

鼠径部痛は VA S にて股関節注射前では 52.0(41.5-63.0),股関節注射後では 0,股関節牽引療法前では 59.5(46.7-68.2),股関 節牽引療法後では 27.5(21.0-33.5) であり,股関節牽引療法前後で有意な差は認めなかった.膝前面痛は股関節注射前では 44.0 (28.2-57.5),股関節注射後では 0,股関節牽引療法前では 46.0(22.5-55.7),股関節牽引療法後では 0(0-0.75) であり,股関節牽 引療法後に有意な減少を認めた.股関節注射と牽引療法による鼠径部痛の改善度については有意な相関関係(r=0.91)が認め られ,膝前面痛の改善度についても有意な相関関係(r=0.81)を認めた.また,鼠径部痛と膝前面痛の改善度について有意な

相関関係(r=0.74)を認めた.

考察

股関節疾患における関連痛については股関節の神経支配が L1 – L4 に及ぶこと,後根反射による神経原性炎症,脊髄後角 での感覚受容野の増大などが考えられている.股関節牽引療法の除痛メカニズムとして,関節内圧の低下,筋のリラクゼー ション,下行性疼痛抑制系の関与などが挙げられるが未だ明らかではない.本研究によって,股関節牽引療法は股関節部の 関連痛と考えられる膝前面痛がより改善することが示唆された.

理学療法学研究としての意義

変形性股関節症に対して股関節牽引療法を行い,股関節由来の膝関節前面痛が減少することが認められた.本研究結果か ら,変形性股関節症における関連痛を股関節牽引療法によって非侵襲的,保存的に股関節由来か見極めれる可能性が示唆さ れる.

若松 志帆:高知大学医学部附属病院リハビリテーション部

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臨床で股関節由来の膝痛を持った方と出会ったお話

この論文を読んで数日後の臨床でこんな経験をしました

変形性股関節症の患者さんで鼠蹊部痛(Groin pain)を訴えて理学療法(PT)を受けていた方の話です

「年末年始で膝関節内側が痛くなったけど、どこもぶつけてないのに」とぼやいていました

疼痛部の圧痛や筋緊張等不自然な所見は認められず、

上記の論文を思い出し、股関節由来の可能性を考え極々弱い力で牽引操作をしたところ…

なんと、膝関節痛が消失しました!!

まさか膝関節痛の由来が股関節とこんなに簡単に鑑別できるのかと驚きました

改めて論文を読むことの大切さを感じさせられた経験でした!

では、また。

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